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昨日の続き

 昨日は水島広子氏の講演とその後のシンポに関するレポのはずが「事業仕分け」の話にズレてしまった。私の文章はいつも、その時切るべきものは切り、必要なものを浮かばせるということが出来ず、まるで鬱蒼とした雑木林のようになる。

 最初に話を戻せば、精神科医・水島広子という人が民主党の元衆議院議員をやっていた、という何とは無しのクエッションマークが事前にあった。なぜ精神科医が国会議員だと不思議な気がするのだろう?医者が政治家をやっていても不思議には思わないし、現に党の要職や大臣になる元医者もいる。しかし精神科医だとどこかピンとこない。精神科医はむしろ「物書きへの転身」がピンとくる。なだいなだ、北杜夫、河合隼雄、香山リカ。。。要するに精神科医は人が見えすぎる。見えすぎるが故に行動者よりも観察者がしっくりくる。そんな固定イメージゆえに、だろうか。

 昨日の講演を聴いていても思ったのだが、水島氏のような職業的立場から政界を見たときに、やはり政治家のキャラクターは余りにも人間の平熱とは違うと気づかざるを得なかったのではないか?精神科医にとって、健全な人間の一般的な定義とは鬱の常態でもなく、逆に高すぎるテンションでもない、平熱の感情を維持する力を持つ人びとだろう。

 その意味では政治家の世界に身を置いてパーソナル・スタディをケースとして大いにフィールド・ワークできた貴重な経験をされたのかもしれない。私も偉そうなことを書いているが、けして健全な精神の持ち主だとは思っていない。結婚し子どもを育て上げる日々に力点を占める普通の常識的な生活人からすると、どこかずれている人間だろうな、と思う。

 それはそれとして、水島氏は政治家のタイプ分析を講演で述べられていた。一つは政治家という地位が欲しい人。親が政治家だったりして、政治家が「職業」や「家業」と不幸にして(?)思い込んだ人がこのタイプなのかもしれない。無事政治家に入職できました、というところだろうか。次にリーダーになりたいタイプ。人を引っ張っていこうとする権力者タイプかもしれない。上から目線。よく「国民の皆様は~」と口にする政治家。あなたは国民じゃないんですか?ってツッコミを入れたくなるタイプでしょうね。もう一つは所謂「政策通」。この種のタイプの人たちはリーダー志向の強いナルシステックなタイプではなく、純粋に自分が持つ専門知識を政治に反映させたいと思う人たちで心理的な問題があるわけではないが、逆に押し出しが弱い。それが政治家としてのネックになっているケースがあるとのこと。そして最後に「追求・野党型」。よくある「なんでも反対」のタイプなのだろうが、反対の素材がないと自我が安定しないという意味では野党にいることで価値を持つ存在かもしれない。(これは僕の勝手な解釈)。

 続けて有権者側の問題や、若者と政治の『分離』の問題も語られた。若者も時代を反映してか、政治に高い関心を持つ層と、全く関心を示さない、政治は無関係な存在だと思っている層との二極分解的なものが見られる。政治に無関心な若者の動機とはすなわち、政治家が「無責任な人びと」に見えるから。自分たちの将来への無責任(年金問題、格差社会、環境破壊等々)。これが「分離」を促進する。そして、若者と政治が分離すると、「民主主義の危機」の可能性がやってくる。これがまた一つ憂慮すべき怖いこと。

 もう一つは「小選挙区制度」の問題。小選挙区制は確かに政権交代を可能にした。その代わり、「カメレオン議員」がどっと増えた。小選挙区制度の下では過半数の有権者の支持を得なければならない。すると必然的に有権者の顔色を伺う。自分の信念とは別のことを平気でいう。そんな人がグッと増えた。中選挙区制も問題はあったが、中選挙区の元では20数パーセントの有権者の支持で当選することが出来た。そんな政治家にとって牧歌的な時代には、自分の信念を貫いて選挙を戦っても当選することができた。今は上からの考えを有権者に伝えるばかりで自分の信念に基づく主張が出来なくなっている。そして、小選挙区は「敵」「味方」の二元論の争いとなる。水島氏自身、そのような「敵/味方」の二文法による選挙戦を戦って学んだことが多いようだ。本来そういうものではないだろう、という意味で。

 水島氏の講演では以上の問題点を踏まえて展望としていくつかを述べられた。民主主義の質の担保のための政治の可能性とは。

・党議拘束をはずす。
・多党制のシステムを構築できないか(敵を作らぬ変革を。例えば北欧型の政治システムなど)。
・メディアが『分離』の促進に加担している状態の是正を。

 この後、北大の(まぁ)有名人、中島岳志氏と公共政策学の宮本太郎氏を交えてのシンポジウムに移行したのでしたが、また長くなってきましたので、シンポについては明日にでもまた続きを書きます。

 いろいろな思うところも含めて。

by ripit-5 | 2009-11-18 21:06 | 新政権