アメリカ-戦争する国の人びと-を見る。

 大変お久しぶりです。また一月以上ブログ更新が滞ってしまいました。その期間、ツイッターはほぼ毎日何かツイートしたり、リツイートしたりしていましたが、思えばブログを書くときにいつのまにか内容を真剣に考えすぎるようになってきて、一種躊躇する心の働きが生まれてしまったのかもしれません。それはつまり、ツイッターの手軽さに呑まれていた面もあるかもしれず。元々ブログも気軽に書いていたはずですので、その原点に戻ろうかと思います。

 さて、今日は単館映画館、いわゆるミニシアターでドキュメント映画「アメリカ-戦争する国の人びと-」の一部を見てきました。一部、という訳は、このドキュメントは前編8時間に渡り、1日に3回に分けて上映するわけです。私はその中で午後の2時35分から約3時間に渡る”エピソード4~6「先住民」「見えない人びと」「ベトナムの記憶」”がアンテナに引っかかったので見てきたわけです。

 映像は映画向けというよりも、完全なドキュメント。簡単なハンディビデオで取材したような、もっぱら「語られる内容」に価値が置かれる作品です。(ただ全編を見たわけではないので断定はしにくい)。
 バックグランドミュージックも一切なく、ノンフイックションを通り越し、生々しくさえもある。特に帰還兵を中心に祖国に帰っても社会適合できず援助団体や、自助グループ的に生きているホームレスの人たちの生活ぶりや語りは、感情を外側から注入することや、リアルの中に飾りを施すようなことは一切排しているがゆえに、却ってその当事者たちの生活ぶりや背負った傷を思わせる話の内容にこちらは受身でいることは出来ず、耳を澄ませていかねばなりません。

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 それが頂点に達するのは第二部のラストエピソードであるエピソード6「ベトナムの記憶」と題するベトナム帰還兵の体験談と現在の自分の生活感情を語る部分です。3人のベトナム帰還兵が自分の戦争体験と現在も背負うPTSDについて語りますが、特に最初に登場する黒人男性の印象が非常に強く、固唾を呑んで話を聞いてしまいます。彼は言語表現能力にとても秀でた人で、戦場体験とPTSDの関係についての自己分析能力も大変高く、ひとりの普通の人間として戦場というものがどれだけ非日常で異常なものであるか、そしてそんな普通の人間にとって戦場のど真ん中の体験がどれほど心に深い傷を負わせるものなのか、嫌というほど思い知らされる。その思いがふつふつと湧き上がります。このエピソードには私自身、洗練されないリアルで簡素な映像と相まって、緊張感の高まりを感じていました。館内も感情が喚起されるというか、居心地が悪くなってくるような感じというか、一人の語りが終わると誰ともなく、具体的な対象もない、苛立ちに近い言葉が洩れていました。おそらく私も同じ気持ちだったはずです。

 普通の若者をPTSDに追い込み、その後中年期がだいぶ過ぎてもその戦場体験に悩まされる不条理はやはり大きく云えばそれを強いた国家への怒り、ということになりますが、アメリカ人でもない自分がやり場のない苛立ちを感じるのは何故でしょう?それは先のアフガニスタンやイラクへの侵攻に日本も武力には寄らないといえ、間接的に加担しているという居心地の悪さゆえもあるのだと。自分自身に関して云えば、そんな思いゆえだと思います。

 多くの場面で「ヤク」という言葉が飛び交います。特に戦場体験者の多くは自分の恐怖心から逃れるためにドラッグに頼っていたのは間違いないようで、日本人から見たら第二次大戦後、朝鮮戦争から始まり、ずっとアジア、バルカン、アフリカ、イスラム圏と戦争を日常的に続けているアメリカという国はどれだけ多くの薬物中毒者を出しているのだろうか?と考えると頭がクラクラしそうです。

 戦争は本当に恐ろしい。そしてそれは戦場での恐怖もさることながら、戦地における心理体験が日常生活をも奪うほどおかしなものに引きずり込んでしまうことがまた恐ろしい。
 率直に言ってここで見るアメリカの影の部分は何度も何度も同じ間違いの再生産をするという上で(先住民虐殺から始まる)、僕らには理解不能な「病い」のようなものさえ感じてしまいますが、その国が持つ先進的なダイナミズムも同時にあるわけですから、我々日本人は、冷静に考えると、不思議な愛憎感覚をアメリカに対して持っている、といえるかもしれません。

 ある意味では愚かなブッシュ大統領という人物が21世紀に登場したおかげで、そのアメリカの影の部分が10年経ってやっと普通に見せることが出来るようになってきた面もあるといえるかもしれません。現在最も良好な国際関係を持っている日米の関係性から見たら、日本にとって米国を反面教師として真面目に受け止める内容。それがこの映画だ、と言っていいかもしれません。

 アメリカにも自己批判的な番組として「デモクラシーNOW!」のような番組もありますから侮れません。この映画も日本人が作った、という点で大きな意味があるといえるのではないでしょうか。
 ただ、大急ぎで付け加えるなら、世界情勢の力学の変化によって日本人が単純に今度は反米や嫌米の感情を持つようになることは気をつけねばなりません。やはり私たちは基本的に内弁慶な民族性を持っているでしょうから。


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by ripit-5 | 2010-07-25 19:58 | 映画