8・15に。NHK戦争証言アーカイブス


 今年の夏はここ札幌においても初夏の頃からたびたび真夏日が訪れ、雨も降るときは激しく、例年とは一線を画す厳しい夏を迎えております。
 今年も8月15日を迎えました。幸い私の両親はいまだ健在ですが(父は二度ほど大きな病気をしましたが)、いわゆる「戦中世代」です。そして、これも幸いながら戦地の体験はありません。

 とはいえ、我が老親の世代。日頃いろいろなことを言いつつも、戦争そのものがいかに惨めで凄惨なものか、食えないことがいかにつらいものかを実感しています。
 問題は我々以降の世代でしょう。実感を持たぬ私たちは論理や後付のイデオロギー以外に実感を持って伝えられるものは無いのです。

 そのようなジレンマに対して、NHKは無料であの時代の歴史の生き証人たちの膨大な資料をサイトとして作ってくれました。これは大変立派な事業で、今後ずっと変わらずに残しておくべき事業だと思います。
 数奇な運命にさらされた兵士や市民たちのナマな証言をすべて無料で映像としてみることが出来るのですから。

「NHK 戦争証言アーカイブス」

 この充実したサイトは日々、長く、少しずつでも全体を視聴することによって、如何なる大義名分を持ってしても戦争行為は悲惨しかよばないことを(常識の感性があれば)見に沁みて理解できるものとなっている。そう思います。
 「8・15ジャーナリズム」という言葉もあるらしく、私も愚かにも若い頃はこのお盆の時期だけに先の戦争を振り返るジャーナリズムに胡散臭さを感じたりもしたものですが、しかし今では年に一度でも戦争を振り返る日があることの意味を肯定的に捉えています。そうでもしないとすべてが胸に響かず風化するのではないか、という思いもあります。

 同時に、今回のNHKのこのような事業によって先の大戦を振り返ることも「夏の年中行事」を越える力もあると証明できそうです。ここにはインターネットの力が奏功しています。
 何よりも戦争体験者の重みある証言を無視して平和を語るのは難しいですし、その逆もまして説得力がありません。幾つかの証言を以下にピックアップしてみました。よければご覧下さい。

昭和19年秋、フィリピン中央部にある熱帯の島、レイテ島で日本軍と連合軍の総力を挙げた闘いが行われた。日本の敗北を決定付けることになった“レイテ決戦”である。

関東地方出身の兵士を中心に編成された、陸軍第1師団。その、1万3千人の将兵の97%がレイテ島で亡くなった。

レイテ決戦は、その直前に行われた戦いで、日本軍が大きな勝利をおさめたという情報に基づき、決行された。しかしその情報は、誤りだった。大本営の認識とは裏腹にアメリカ軍は戦力を保っていた。

アメリカ軍に補給を断たれた、レイテの日本兵は、飢えや病で次々と倒れていく。

なぜ、誤った情報に基づく闘いが行われ、多くの命が失われたのか。陸軍第1師団の元兵士の証言から、レイテ島での過酷な闘いの実態に迫る。


[証言記録 兵士たちの戦争]フィリピン・レイテ島 誤報が生んだ決戦 ~陸軍第1師団~

対馬丸。乗客およそ、1700人のうち、800人あまりが、学童疎開に向かう子どもたちであった。

出航した翌日、対馬丸は、アメリカの潜水艦の攻撃を受けた。海に投げ出された子どもたちは、荒波の中で、次々と息絶えていった。

沖縄からの疎開は、国が勧めたものであった。アメリカ軍を迎え撃つ際、島の住民が、軍の足手まといになるという考えからであった。

対馬丸の沈没で犠牲になった人は、1400人以上。その半数が、疎開先へ送り出された子どもたちであった。なぜ多くの幼い命が失われたのか、生存者の証言をもとに、対馬丸の悲劇をたどる。


証言記録 市民たちの戦争]海に沈んだ学友たち ~沖縄 対馬丸~

 このような普通の市民層の負った不条理・無念・言葉にしがたい人間的極限を見た上で、当時の日本国国家の上層部の観念表出録音テープです。

翼賛政治會の創立|戦時録音資料

 その他、戦争資料映像や録音資料など、周辺資料も多数視聴できます。
 最後に玉音放送を。元からの音声なので、非常に明瞭です。
昭和天皇、終戦の玉音放送|戦時録音資料|

 戦争を考える場合、感情に訴えるところから当然始めるべきですが、同時にその矛盾の極限に至るまでにそこまで行ってしまった過程、幾つかの躓きの石となった局面があるはずで、そこまで理解を深めるためにはある程度、戦争が始まるまでの近代史を知っていく作業も必要になるはずです。
 また、南方戦線であれば当時のフイリッピンやインドネシアの国民の心情も本来ならば、知っておくべきはずです。

 戦争は残念ながら現代においても終わっていません。日本人が撮った『アメリカ・戦争する国の人びと』のように、ベトナムからひき続く戦争帰還兵の戦争による後遺的な外傷などでホームレス、薬物中毒、精神障害や社会適応障害などの問題も表層ではなく人間社会の深層を見るならば、現代社会においても戦争を続けている国においては戦争の傷痕がいまも強く残っていることに気づかされます。

 われわれは勇ましさ、強さ、勝利、成功うんぬんの元気印の刺激のほかに、その影として戦争と戦争の傷跡に今も苦しんでいる人のことをけして忘れてはいけないと思うのです。人の営みの光や明かりしか見ることが出来ないのは精神の幼児性を示している。そこまで云うのは言い過ぎでしょうか。

 戦争で傷ついた人たちのやり切れぬ思いを共有できないにしろ、「想像すること」が今後の人間がより理性的になるべき営みにとって大変重要ではないでしょうか。

 ツイッターをやっていて偶然掴んだ貴重なNHKのこのサイト。NHKの立派な情報公開作業として私は万雷の拍手を送りたいと思います。
 今後は東アジア全体の共同作業として、この戦争に巻き込まれた普通の人びとの証言集が一つのサイトでまとまって視聴できるようになったら、どれほど有益なことになるだろうか、と思います。
[PR]

by ripit-5 | 2010-08-15 20:47