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トリクルダウン効果に頼る社会福祉政策

 昨日の講演に補足してずっと考えていました。
 それは湯浅さんがいっていた日本の政治が社会政策を立てる際に浸透している「トリクルダウン効果」というもの。その「トリクルダウン」とはなにか。ウィキペディアによると。
トリクルダウン理論(trickle-down theory)とは、富める者が富めば、貧しい者にも自然に富が浸透(トリクルダウン)するという経済理論あるいは経済思想である。「金持ちを儲けさせれば貧乏人もおこぼれに与れる」ということから、「おこぼれ経済」とも通称される。


 というものらしい。昨日のシンポでも語っていた、まず緊急社会政策というときに、国民一人一人に直接投資をするという発想がなく、まず企業に補助金を出す発想をする。たとえば、一人の内定取り消し者を採用するのに、また新規採用を渋る中小企業に、一人採用すれば100万円の補助金をつけよう、などとする。
 このように、社会政策が「企業福祉」を中心とした発想から抜けない。一人の人に直接お金を渡し、そこで自立自活する制度があればまず個別の人間が救済されるし、自立した個人が自分で仕事を生み出すかもしれない。そこから新しいクリエーティヴな仕事も生み出されるかもしれない。
 なぜそれが出来ないかといえば、やはり日本の官僚や政治家にそのような「企業からの間接投資」の思想しかなく、「個人への直接投資」というスキルやノウハウを持っていないことに起因するのかもしれない。

 僕の考えでいえば、「習慣から抜けられない」ということでもあろうかと。

 だからこそ、北欧のことが頭に浮かんだし、また、北欧は北欧なりの文化の蓄積のうえに成り立つ社会保障政策なのかなぁ?と思ったのだった
 日本が企業内福祉や企業別労働組合中心主義になったのは日本の長い家父長制の残滓にまで関係するのかどうかは分からない。

 ただ、組合に関しては明治時代には産業別組合があったようだ。印刷工組合とか、鉄工組合とか。しかし、近代化の進展と、当時だんだん強くなってきた社会主義や無政府主義の思想に政府が危険を感じ、治安警察法や、その後の戦争における国家総動員法などで、事実上組合運動は壊滅した。

 戦後、GHQの力で労働三法が出来て、労働基準法によって、また憲法25条によって労働基本権と生存権が守られる仕組みになったわけだけど、元々大衆の望みで生み出されたわけじゃない。敗戦後に占領軍から提示されたもの。
 基本的に長く続いた保守政権政治の成功体験もあり、新しい社会保障政策にシフト出来ない精神構造が社会全体にあるんじゃないかな。強い日米関係で米国が80年以後長く共和党の保守的な政治が続いていたせいもあるし。

 そういうことを考えていました。なかなかヨーロッパ的な発想が根付かないのは別に北欧が人口が少ないからというだけの理由じゃないものがあるんじゃないか?って気がしてならないのです。

by ripit-5 | 2008-12-13 22:37 | 湯浅誠