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しつこく裁判員制度や冤罪に関して。

 今週のトピックのひとつとして、自分の中でまだ続いている足利事件に対する関心ですが。
 まず、最高検察庁の次長検事が足利事件に関して謝罪する、というトピックスがありました。
 それについて、菅家さんは(おそらく)素直で善良な自分の性質に似合わず、一貫して怒りをあらわにして「出てきて、自分の面前で謝れ」と記者会見で述べたと伝わってきています。また、今回は明確に裁判所に対しても批判をしている。これが新しい、注目すべき現在の菅家さんの理解と心情ということでしょう。

 本日は先の菅家さん釈放直後の記者会見プレスクラブ全模様をアップしているビデオニュース・ドット・コムで見つけることができた「裁判員制度に関するシンポジウム」「裁判員制度の見直しあるいは廃止を求める超党派議員連盟の総会」「制度発足に伴う法曹三曹(検事、弁護士、裁判官)の各トップの合同会見」の全編をアップします。こちらも大変勉強になります。裁判員制度に関心のある人は必見ではないかと。

 こういうソースを無料で見ることが出来ると、地上波ニュースだと編集されてしまう記者会見等のニュースや各種政務委員会を流してくれるビデオニュースがあるといいのに、と本当に思うこのごろです。ニュースの編集作業というのはどうしても編集する側の大小に係わらず、前例主義的とでもいうべき意向が反映するような気がしますし、その点、時間枠にもとらわれないネットでの「全編未編集」での会見等はきわめてリアリズムで、見るこちら側に考える裁量権が持てるというか、自分の判断を得ることが出来るし、視聴時間が気にしないで済む利点もある。今後、政局もおそらく大きな動きがあるでしょうから、長期的にはそのような方向性における仕事は有利だと思いますけれどね。

 昨日所用で北海道庁合同庁舎に行った際、最高裁判所で発行している『司法の窓(74号)』という小冊子を手に入れました。それなりに内容があって、時宜にかなっています。巻頭はサスペンス小説作家と裁判官の対談。やはり裁判員制度導入に関しての話題です。

 興味深いのは海外レポートでフランスの「参審制」。このフランスの制度は主に重罪を裁くこと、候補者が選挙名簿から無作為抽出されるなど、日本の制度とよく似ているそうです。但し、フランスは参審員は9名。参審裁判が行われる裁判所は”重罪院”とも呼ばれるそう。
 フランスのこの制度の発足は古く200年以上前から行われているそうですが、流石、ここが大きいだろうなと思うのは、1789年のフランス革命以後ということで、やはり「市民革命」と「司法の市民参加」の連関があるのではないかと。そして市民革命の占める位置の説得性があり、もっと言えば文化的な正統性?というべきものが。これがあるような気がする。そこだけで、市民革命国家だからだということで語ってしまえるというのであれば、それは誤解を呼びそうです。ただ日本の持つ文化固有性と近代裁判のありようの違いはけして小さくはないのでは、と正直思います。(言葉足らずかもしれないのでこの点も改められたらいいですが。)
 とはいえ、とはいえ。その市民革命で成立しているフランスにおいてもやはり参審員に指名された人たちも不安が多いとのこと。ですが、実際に参加してみたら参加して良かった、という意見が多かったとか。(レポによれば。)

 この小冊子全体を貫くトーンで思ったのですが、司法の市民参加による市民の不安は分かるということを基調にしながらも、やはり実際参加してみると有意義であった、やってよかったというものなのですね。そういう観点から、つまり「司法参加の市民の観点」からはなるほど、やってみて良かったんだろうなと思うんですが、どうも気がかりに思い、欠けているなと思うのは被疑者や容疑者の観点なんですよね。もちろん、司法の市民参加の歴史が長いフランスでもやってみて良かったと言う市民参加者は、十分被疑者の人たちの意も斟酌して、悩みながら判決を出したことも含めて参加してよかったということだと解釈しますが、しかし、司法参加前の不安と参加後の充実感ばかりを強調されてしまうと、私のようなヒネクレモノはそのような人たちに裁かれた被告たちにとっては「どんなもんなんだろう?」「どういう思いを持つだろう?」とつい思ってしまいます。

 え~、この文章も長いすネ。

 では「裁判員シンポ」と「超党派議員総会」「当事者トップの人たちの会見」です。
 自分の感想を述べると、まず最初のシンポジウムは裁判員制度反対の立場です。在野弁護士が反対の立場なのは、弁護士が市民参加として望んでいたものとおそらくどこかで制度の根幹が変質したのだろうということが想像できます。(僕がシンポに参加したのは弁護士会がまだ積極的に市民参加を求めていた頃でした。)ジャーナリストの斉藤貴男氏は裁判員制度そのものを越えた国家的方向性の危惧が問題意識の中心のようなので、ちょっと議論としては少々乱暴なところが感じられるかもしれないです。でも、国家と国民の関係性に関する保守派の立場への違和感はよく分かります。僕は官僚批判する中川秀直さんや渡辺喜美さんが「国民国家」とは絶対言わず、必ず「国家国民」という云い方をするのが非常に気になる人間なのです。

 興味深いのは超党派による制度見直し・廃止を考える会合。面白いといってはなんですが、ほとんどの議員が制度発足に賛成してたけど、その法案の中身を良く知らなかった。そのことをけっこう率直に認めて、自身の不明を恥じている。あと、鈴木宗男さんの発言はエモーショナルだけど説得力があります。かの人がいうように、「裁判員制度廃止」をマニフェストに掲げる政党は勝ち目があると思いますよ。(ところで、いつ頃から公約という言葉が消えてしまったのだろう?)

 3つ目の当事者たちの記者会見は制度の主体者たちの会見ですから、想像できるでしょうがおおむね退屈なものになりがちで、この会見の内容もやはりその例には漏れません。ただ、反対の立場だけでなく、賛成の立場からの意見と照らし合わせて自分の意見を作るのが理想だと思います。すべて知っておいたほうが。特に「公判前手続」の認識の違い、特に検察トップの認識。裁判員守秘義務の認識の違いに注目を。それから弁護士連合会の会長がやけに官僚的に見えてしまう不思議さ。弁護士会もあれだけ知的な能力ある人たちのトップになると国家官僚的になってしまうんですかねぇ。印象としては、どうしてもそう見えてしまうのですよ。では ↓

「これでいいのか裁判員制度 - プレスクラブ - ビデオニュース・ドットコム インターネット放送局」

by ripit-5 | 2009-06-13 13:31 | 社会